学会通信第15号 特集 第4回大会報告
目次
- 第4回大会を終えて
- 学会企画シンポジウムの報告
- 課題研究(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)の報告
- 基礎研修・大会参加・ SSWr の集いの報告
第4回大会を終えて 高良麻子(東京学芸大学・大会事務局長)
7月4日と5日に260名を越える方々をお迎えし、平成21年度日本学校ソーシャルワーク学会第4回大会を無事終了いたしました。ご参加いただきました方々をはじめ、日頃から本学会をご支援いただいております会員の皆様に心からお礼申し上げます。
本大会では、大会テーマである「学校ソーシャルワークの定着に向けて」を念頭に、1日目は学会企画シンポジウムにて「スクールソーシャルワーカーに期待される役割とは」について、養護教育、スクールカウンセリング、教育委員会、保健衛生それぞれの立場から議論がなされました。2日目は、学校ソーシャルワークに関する13の自由研究発表が行われ、各発表者の発表にとどまらず活発な質疑応答がなされた結果、学校ソーシャルワークの更なる研究の向上に向け発表者と会場の参加者ともに学ぶ機会になったのではないかと思います。その後、課題研究として「学校ソーシャルワークのエビデンス」、「貧困・社会的排除の視点から見た学校ソーシャルワーク」、「スクールソーシャルワーカーへの支援体制」それぞれの課題について、見識ある研究者および実践者が中心となり話題提供をしたうえで、参加者とともに検討を行いました。
なお、この大会を実践者にとってさらに有益な機会とするために、大会に先立ち基礎研修として「グループワークで学ぶ派遣型スクールソーシャルワーカーの働き方」を開催しました。教室の収容能力をはるかに越える参加希望があり、お断りした方々には誠に申し訳ありませんでした。
本大会の最も大きな意義は、教育関係者、福祉関係者、精神保健関係者等多様な専門家が一堂に会し、児童生徒の福利厚生の向上に向けて議論できたことではないかと考えております。参加者がそれぞれの立場で何をなすべきなのか、またそれを可能とするシステムはどうあるべきかについて議論が深められたと思います。
本年度の大会が「学校ソーシャルワークの定着に向けて」着実な一歩となったことを願ってやみません。
学会企画シンポジウムの報告
スクールソーシャルワーカーに期待される役割とは
鈴木 庸裕(福島大学)
学会企画シンポジウムでは、学校保健、スクールカウンセリング、教育行政、司法福祉の立場から、「
SSWr
に期待する役割」を提案いただいた。いずれの話題や提案も、すべて現時点での学校ソーシャルワークの実践理論や
SSWr
の力量形成にとって重要な課題であり、その課題をそれぞれの諸領域から映しだしていただいたと思われる。後発で教育領域にやってきた領域として、真摯に受け止めつつ、今、何をすべきか。その焦点化への示唆が得られたシンポであった。
「学校保健の現代的課題とスクールソーシャルワーク」として朝倉隆司氏(東京学芸大学)は、
SSWr
との接点として、学校保健独自の課題に引きつけて提案いただいた。子どもの健康増進と安全をめぐる地域連携や校外連携の専門性への期待、学校保健のメンタルヘルス論に見られる社会的要因への着眼の弱さに対するフォロー、そして貧困と子どもの健康や思春期青年期に及ぶ「健康格差」の問題やヘルスプロモーションにおける「エンパワメント」をめぐる共有化が指摘された。ともの職場では「一人職」であることが多い養護教諭への支えでもあって欲しいとの要望があった。
東京都スクールカウンセラー(臨床心理士)である植山起佐子氏は、
SC
も責任ある養成課程がなく、自分たちのアイデンティティについて自己研鑽でしかなかったこと、「黒子に徹しなさい」といわれて導入された自らの経験から、「指導困難校」との出会いの中で、「環境を変えていく」「地域活動を視野に入れていくと、職場の中が変わってくる」ことを実感。ただ、虐待や卒業後の就労支援、青年期以降への見通しを一緒に考えていく人材が身近に欲しい。我々専門家は「あとへは引きさがれない」という局面に身を置くことが多い。
SC
と
SSW
との専門性の差異をいかに認め合うのか。これは「一緒に仕事をしてみないとわからない」という現実もあるが、外部機関との多面的な連携や家庭訪問などのアウトリーチ、関係法規や福祉サービスとの調整、発達障害児などへの就学就労支援など、
SSW
への期待が語られた。
次に、「杉並区における
SSW
活用の考え方と実際」として、杉並区済美教育センター副所長の坂田篤氏は、教育行政の立場、かつ、学校教育と
SSW
にまたがった立ち位置から提案された。
学校文化を変えていくことの難しさがある中で、
SSW
活用事業を動かしていくことの苦悩が論じられた。教育現場からは、学校支援の柱として、課題に押しつぶされそうになるときの防波堤になってくれたとの評価がある。
特に
SSWr
の力量形成に関しては、子どもを丸ごと受け止めていこうとする深い人間愛、情報収集・整理の能力、個人や組織をめぐる関係調整の能力、観察力、コミュニケーション能力とともに、学校教育についての知識理解や組織の中での「自己のあり方」についてコメントがあった。
4人目は、「スクールソーシャルワーカーの役割としての被害・加害関係の修復」という演題で、鈴鹿医療科学大学の藤原正範氏(学会会員)である。司法福祉および
SSW
・SV経験の立場から、学校教育の課題を指摘しつつ、その一方で、学校の生徒指導・教育相談や特別支援教育では手に負えず、学校が脅かされている課題について言及があった。学校の子ども理解やその意志決定体制を見直していくことに介入すること、予防的環境づくりを推進すること、特に、被害者支援へのサポートや加害者支援への関わり、あるいは「子どもや青年の大人社会への憤り」を
SSW
がいかに解消していくのか。こうした観点への提案がなされた。
数多くの質疑応答については省略するが、教育とソーシャルワークとの間で生じる「事実関係の認識の相違」について、いかに実証的に明示化していくのか。エビデンスについても、「その人だからできる」というソーシャルワークのスキルを、いかに般化し、そのことによっていかなる専門性を確立させていくのか。今後、学会としても、
SSWr
個々としても、大切な課題であろう。
数年後、改めて、こうした諸領域からの評価コメントを得る機会があればいいと思う。
課題研究Ⅰの報告
学校ソーシャルワークのエビデンス
岩崎 久志(流通科学大学)
大会2日目、最後のプログラムであったにもかかわらず、会場の教室には予想外に多くの参加者が集まった。ピーク時には40~50名にのぼったのではないだろうか。
本プログラムは、盛りあがった。ただ、企画・司会者としての思惑とはいく分異なる形で、いわゆる「意図せざる結果」として、である。それについては後述する。
まず、本課題研究の企画意図について、大会プログラムでは十分に言及できていなかったので、この場を借りて少し触れさせていただきたい。ここでいう「エビデンス」とは、「実証に基づく対人援助」という発想を背景とした、対人援助の新しいパラダイムおよびそれに基づく具体的な取り組みのことを意味する。また対人援助とは、具体的にはスクールソーシャルワークをはじめとする教育臨床における支援の実践を想定している。
これは主に、2つの柱からなると考えられる。
- 標準化されたアセスメント技法を用いて、対象者の変化を客観的に評価しながら臨床実践を行う。
-
効果研究によって臨床技法を吟味する。さらに、その結果(エビデンス)を系統的に収集・統合して配信する。
エビデンスという言葉には、従来の対人援助が勘と経験のみに頼り過ぎていたという批判が込められている。しかし、その本質は、単なる批判に終始しない、前向きで具体的な指針を提供しようとする姿勢が求められる。その結果、対人援助の実践が実証性における社会的責任を果たすとともに、より効果的で質の高い介入法の開発および普及が図られることが望まれる。
上記の考えを踏まえて、新進気鋭の研究者および実践家のお二人に講師・話題提供者として登壇していただくべく白羽の矢を立てた次第である。
米川和雄氏には、「中高一貫校でのピアコーチによる校内支援体制構築」という演題で自らの実践的研究についてプレゼンテーションをしていただきつつ、量的データの統計処理や検定に関する研修を兼ねた講演をお願いした。
また、大西良氏には、「エビデンスに基づいた学校ソーシャルワークの実践」というテーマでご自身が関わられた事例を紹介していただきながら、各事例での調査データとその分析結果を通して、エビデンスに基づいたスクールソーシャルワークの実践とその展開についてご報告いただいた。
両者のプレゼンテーションの内容とも、スクールソーシャルワークの実践者にとって、ともすれば苦手とするデータの処理やその実証への活用法について詳細に言及され、先に触れたエビデンスという視点を私たちが身につける上で大いに示唆に富む内容であったと思われる。
しかしながら、フロアーからの質問および意見は、エビデンスベイストの方法論に関するものは少なく、それ以前に実践者の主体あるいはアイデンティティに関することに集まり、本プログラムの議論を方向付けるものとなった。具体的な議論の中身については、大門氏の文章も参照願いたい。
その要因のひとつに、両報告者とも、スクールソーシャルワーカーという名称のもとに実践された事例ではなかったということかある。米川氏の「ピアコーチ」、大西氏のスクールカウンセラー事業の枠内でのスクールソーシャルワーク実践ということが、プレゼンテーション内容とは少しかけ離れ、一人歩きして伝わった面があることは否めない(司会者の未熟さに因るところが大きい)。
いずれにしても、本課題研究での議論は、スクールソーシャルワーカーの登用について、社会福祉士や精神保健福祉士に限定するものか、あるいは教職経験者やカウンセラーといった多様な人材にも門戸を開いていくのかといった、根本的であるにもかかわらずまだ十分に議論がなされていない問題を露呈する形となった。
このことは本学会にとっても無視できない課題として、今後とも議論の俎上にのることは不可避であると、改めて認識することとなった。
「課題研究Ⅰ」に参加して 大門 俊樹(東京福祉大学)
課題研究Ⅰは、「学校ソーシャルワークのエビデンス」という壮大なテーマのもと行われた。エビデンス・ベーズド・アプローチへの挑戦というキーワードにもひかれ参加した。
米川会員からは、「中高一貫校でのピアコーチによる校内支援体制構築」と題して報告があった。まず、4年間の長きにわたる実践研究報告に敬意を表したい。ピアサポートという多少なじみの薄い分野ではあったが、年齢差が大きくキャリア開発という課題もある中高一貫校では確かに有効であるように感じられた。また、問題対処型ではなく、予防・開発的な観点もたいへん新鮮に思われた。教員によるピアコーチの評価では、高校教師から「教師のやる気」、中高両方の教師から「学校の自治」という面での効果が指摘され、「学校全体がまとまってきた」という米川会員の言葉も印象的であった。米川会員からの豊富な報告内容を受けて、フロアからもさまざまな反応があったが、惜しむらくは「もう少し時間があれば」というのが率直な感想であった。
大西会員からは、「エビデンスに基づいた学校ソーシャルワークの実践」と題し、3つの事例を通した報告があった。まず、自らの実践現場(中学校)で得られた調査データを丹念に分析され、それを先生方に提示し、校内研修や新たな授業プログラムに生かすことで、校内変革につなげられている内容から、
SSWr
の存在意義を示されている様子が伺えた。
この時、コーディネーターの岩崎先生からも、既成のものを使った単純集計であっても、その結果を先生方に示すことで新たな発見をしていただけるという話があった。と同時に、不登校やいじめ問題の解消など、教育現場特有のニーズに合わせた効果を示していくことも重要であると思われた。
フロアからは、教育の専門家による
SSW
ではなく、福祉の専門家である
SSWr
の存在意義についての質問がたびたび投げかけられた。当日は時間が十分でなく、十分な議論はできなかったが、私も、SWの知識と技術を身につけた
SSWr
が関わるべきというエビデンスの追求は避けては通れないと考えており、学会として継続して議論すべき点であると思われる。
今後私自身も、「学校ソーシャルワークのエビデンス」構築に向けた取り組みをしていかねばならないと決意を新たにした次第である。
課題研究Ⅱの報告
「貧困・社会的排除の視点から見た学校ソーシャルワーク」について
岩田 美香(法政大学)
今日、社会的な格差・貧困を背景として、学校における子どもたちの貧困問題についても関心が高まり、様々な事例やデータから、その実態と課題について明らかになってきている。そうした子どもたちの援助を学校ソーシャルワークとして、どのように行っていくのかについて、具体的な援助における仕組みやスキルの向上も必要とされるが、同時に、学校という場におけるソーシャルワーク実践である限り、「学校」「教育」にかかわる基礎的な検討の積み重ねも要請される。今日の学校や教育にかかわる問題についても、社会状況や一連の教育行政の流れを受けて「今」が存在しており、そうした大きな枠組みの中で学校ソーシャルワーク実践を考察していく必要があると思い企画した。
講師には、あえてソーシャルワークの門外漢である松山大学人文学部の大内裕和教授を迎え、教育社会学・教育行政学の歴史的な流れの中で、今日の貧困と教育について読み解いてもらうことをお願いした。講義は、「湯浅誠とWednesday」という意外なキャッチフレーズから始まり、教育改革による学力低下と労働市場にかかわる貧困問題について、教育格差の視点から解説していただいた。
「個性」重視と「ゆとり」教育に向けた一連の教育改革と、教育への市場原理の導入が、初等・中等教育の実質的な複線化(差別化)をもたらし、それが近年注目される格差社会へと繋がっている。なかでも興味深かったのは、そうした学力の階層性が、グローバル化での労働力再編、すなわち労働市場における働き方の階層性とリンクしていることについての分析である。今日、注目される派遣雇用やワーキングプアなどの問題と、公教育の問題とを同じ土俵の上で再考することができた。一連の講義を受けて、フロアからは各地域での困難事例の紹介や、教員とスクール・ソーシャルワーカーとの独自性と類似性について、また両者の連携のあり方について、具体的な質問や意見が出ていた。スクール・ソーシャルワーカーや教員だけではなく、大学院生からも活発な質問や意見が出ており、学校現場が直面する貧困問題の深刻さと重要性を改めて実感した。
学校ソーシャルワークは、子どもたちの教育保障、基礎学力の保障を下支えする役目を担っていると考えることができるが、大内氏の、「学校ソーシャルワーカーも教師と同等の待遇を得て活動できるのであれば導入賛成だが、学校現場における『安上がりの助っ人』として使われるのであれば反対」という発言は、スクール・ソーシャルワーカーの職域拡大と同時に職務上の地位の保障をいかに担保していくのかという課題を突きつけられたように思う。
新たな視点からの学びの機会を得ることができたのと同時に、大内氏の社会問題に対する鋭い指摘に触発され、私たちソーシャルワーカーが、ソーシャルアクションを起こしていく主体としても存在していることを再確認させてもらった。
課題研究Ⅱの分科会に参加して
大沼 洋子(宮城・高校)
実業高校に勤める中で、思ったよりも多い片親家庭、授業料減免申請をしている生徒と接している中で、「厚い本に何時間もかけて首を傾げて読むよりも、1,2時間で分かりやすいお話を伺ったほうが、身につくかしら」安易な発想で、参加した。
現代日本史、政治経済の流れの中で、大学は定員割れ、入った学生は、学費が払えずアルバイトで体調不良、予算削減の中で研究も出来ない話(大学は就職よりも入学させやすくなったし、進学する生徒の予約奨学金希望者は増加の一途)。家庭の貧困の広がりの中で、担任は、そのような一人ひとりの状況への対応が出来ず、小・中学校の教員の半分以上が定年前に辞めている。うつ病、病休が増加している話(25年共済年金を払えば、65歳になったら少しでもお金をもらえるよね、60歳まで身体が持たない、そこまで働いたら身体がぼろぼろ…との会話は、炉辺談話に出てくる)。不況に増えるという公務員希望者だが、教員希望者の倍率は低下している。(そう、教育現場は思ったようなところではなくなっている。「そうだったのか」という他の方の表情を見ながら、そうそう、とうなずく私。でも、知っているだけでは問題解決にはならない、アクションが大事!)
最後に、国の施策として、奨学金の充実、高校大学まで学費が無料などを行うこと、教員の仕事は授業をすること。部活はスポーツクラブ、カウンセラーはカウンセリング…分業化させていこう! そして、ソーシャルワーカーは・・・。(ここで、話が切れたのは、自分たちで考えてくださいということかしら?)
教育にお金を投資しなければ、人は育たない。「学校にもあったらいいな、いたらいいなこんな人」に予算をつけるよう要求し、子どもの心と身体の成長、教師の健康に何が出来るのか。聞きながら、とりあえず、授業料未納の家庭への授業料催促のための家庭訪問に担任教師も同席させられたり、いつの間にか授業料を払えずに退学していく生徒がでる前に(注:本校はない)、私に出来ること、授業の中で、デートDV、DV、児童虐待のコマを設けて考える機会を作ったり、生徒に何らかの情報を提供したり…。でも、前提として、生徒の話を聞いたり、他の職種と情報を共有し、一人ひとりの子どもを支えあうためには、教員一人当たりの生徒数を減らしてほしい。それが最初かな。毎年、200~300名以上の生徒の名前と顔の覚え直しをしている。制服は同じなので、体型と顔だけで。年々覚えられなくなっている。
課題研究Ⅲの報告
スクールソーシャルワーカーへの支援体制
大崎 広行(目白大学)
Ⅰ.発題の趣旨
委託事業から補助事業への移行にともない、「 SSWr 活用事業」を取り巻く情勢は非常に厳しいものとなっている。特に昨年度、「問題を抱える子どもの自立支援事業」の中で SSWr を活用していた自治体や「 SSWr 活用事業」を市区町村独自に実施していた自治体にとっては、多くの自治体で事業の継続が危ぶまれている。本事業の補助事業への移行にともない、自治体が負担する2/3の予算をどう捻出するかは、それぞれの教育委員会の裁量に委ねられており、本事業の継続と成否は、各教育委員会や担当指導主事のこの事業に対する「やる気」や「思い」に依拠しているといっても過言ではない。このことは、「 SSWr の支援体制」の構築においても同じであり、本分科会では、話題提供の二つの自治体の動向をふまえ、それぞれの立場から SSWr の支援体制のあり方について検討した。
Ⅱ.発題
発題者からは、あらかじめ各話題提供者に下記の内容が提示され、これらの内容をふまえて、それぞれの立場からの話題提供がなされた。
-
SSWr
の支援体制の構築にむけて
- SSWr の職場環境の整備
- スーパーヴィジョン体制の整備
- 専門性の向上
- SSWr の労働条件の整備
- 都道府県教委と市区町村教委の役割分担
- 教育委員会として「できること(可能性)」と「できないこと(限界性)」
Ⅲ.話題提供
新潟県では、市町村のサポートチームの要として
SSWr
を活用しており、まだまだ不十分なところもあるが、県教委が主体性を発揮して
SSWr
の支援体制の構築に努めている。新潟県では3カ所の県教育事務所に
SSWr
を1名ずつ配置し、市町村教委からの要請に応じて小中学校に派遣している。
SSWr
の支援体制確立の課題としては、
SSWr
への勤務内容と勤務時間との間にギャップが生じており、
SSWr
への報酬単価を今後どう設定していくかが大きな課題となってきている。また、現在の事業予算では、ほとんどが人件費に充てられ、
SSWr
の研修予算が組めないのが実情である。
新潟県の
SSWr
の立場からは、県教委としての努力を認めつつも、実際の仕事内容と賃金等低いレベルでの雇用条件とのギャップについての課題が指摘され、
SSWr
の労働実態に即した改善が強く求められた。
高崎市は、昨年度に引き続き「問題を抱える子どもの自立支援事業」の中で自立支援相談員として1名の
SSWr
を活用している。中学校を拠点校として、学区内の3小学校に週に1日ずつ配置し、小中の連携を重視した実践が行われている。
高崎市における
SSWr
の支援体制としては、
SSWr
の勤務日週5日の内、1日は市教委での担当指導主事とのケース会議と打合せ日に充てられており、配置校と
SSWr
との間で何か問題が生じた場合には、担当指導主事がバックアップできる体制がとられている。しかし、こうした機能も担当指導主事が他の業務で多忙なため十分生かせていないことが課題である。
Ⅳ.質疑応答と総括
フロアーからの質問では、「本事業と福祉部局とのつながりについて」「本事業における市町村格差の問題」「SV体制をどう確立するか」「雇用の継続と保障の問題」等が出され活発に意見交換がなされた。
SSWr
の支援体制をどう確立していくかは、高い専門性をもった
SSWr
を確保していく上で喫緊の課題である。これまでの多くの自治体の取り組みの中から、
SSWr
の支援体制構築の課題は明らかになってきているが、こうした課題にフォーカスできるだけの予算と制度上の安定が求められる。本事業の成果を上げるとともに、教育委員会や学校の本事業関係者の意識の醸成が必要である。
課題研究Ⅲの分科会に参加して
土屋 佳子(栃木・
SSWr
)
本分科会では、目白大学大崎氏からの発題後、高崎市教委の橋爪氏、新潟県教委の樋山氏と同県
SSWr
の山岡氏による話題提供があり、続いて参加者との活発な意見交換が行われた。セッションの冒頭では、「支援体制を考える以前の問題」として、
SSWr
活用事業を取り巻く情勢と今後の動向について取り上げられた。短い調査研究期間で成果や評価を十分に示せないうちに委託事業から補助事業へ移行した今、
SSWr
活用事業を持続可能なものにするためには、それぞれの自治体が予算を拠出できるかどうかがキーであり、それを踏まえた上で、支援体制構築についての議論がなされた。
報告された現状からは、雇用・予算・地方分権といった制度面と、
SSWr
の研修・SV体制の整備・教委や学校の理解とバックアップといった支援体制面での問題が共通して挙げられた。特に、
SSWr
の立場で発言した山岡氏は、自らの専門性や使命感と実際の雇用体制とのギャップについて、人材育成の視点も織り込みながら問題提起していた。こうした点より、①
SSWr
の職場環境と労働条件の整備②SV体制の整備や専門性の向上③都道府県教委と市町村教委との役割分担の問題、④教育委員会の可能性と限界性といった課題が浮き彫りになった。
フロアからは、①SV体制の整備②行政内での他部局や、他機関との連携③特別支援教育(特別支援コーディネーター等)との関連④人材育成の問題等についての質疑や意見が続き、予算面のみならず人材面、事業運用面でも地域間格差が生じていることが認識できる内容となった。自治体教委が、各々の地域性に応じた教育的課題を分析・整理し、
SSWr
の活動といかにマッチングさせていくのか。また
SSWr
側が
SSW
の有用性を示すための可視化をどう進めるのか。相互作用による自主的で包括的な立案と冷静な実行力が、支援体制構築のプロセスには不可欠であることを強く感じた。
基礎研修を受講して
帖佐 加代(静岡・
SSWr
)
「ええっ!同じ事例なのにアセスメントがこんなに違って良いの!!」2つ目のグループ発表を聞いたとき、教室全体にざわめきが起こった。情報係に渡された情報は、同じ事例なのに「虐待を背景に感じさせるもの・発達障害を背景に感じさせるもの」の二つがあった。そのため、グループワークで行ったアセスメントに大きな違いが生じたのだ。
質疑応答での「学校から提供される情報が異なることで、
SSWr
が児童の背景や見立て、プランニングを間違ってしまったらどうするのか。」という質問に対して「一回で効果的な手立てを立てることは難しい。付け加えの情報でより的確な手立てを見出すことができる。」また、「必要な情報(児童理解)が、どこ(だれ)にあるか問いかけることで、学校内で情報の共有がなされ、先生方の役割意識にもつながる。」と答えが返された。さらに、「情報の整理により、児童(家庭)の持っている可能性の共通理解ができる。」という観点は、目からうろこだった。
派遣型
SSWr
は、内容を十分知らされないままケースに関わることが少なくない。しかし、児童理解を促す問いかけを通して、児童の生活の中心になる学校環境にどう働きかけるのか(ケース会議等)、自分なりのイメージを深めることができた。
SSWr
として2年目の夏、「児童にとって~」という基本を忘れず、これからの活動に生かしたいと思う。ありがとうございました。
基礎研修を受講して
高田 裕子(鹿児島・
SSWr
)
今年度二年目の事業として前任者から引き継ぎ、5月からどうにか二ヶ月が過ぎた頃の研修であった。待ちに待った、基礎研修。遠く鹿児島からやって来た。当初の予定をはるかに超える申し込みであったらしい。教室内は、熱気に満ちていた。まず、予め決められた班ごとに着席。私は五人のメンバーと初顔合わせした。さすが福祉の人、和気あいあいと自己紹介しフレンドリーに話も弾む。
まもなく、グループワークが始まった。個別ケースのアセスメントをもとにケース会議を進めていくのだ。各班で司会進行、記録、発表者、情報提供者を決める。情報提供者はいったん廊下に集められ、先生より情報をもらう。全員が揃ったところで、配布されたアセスメント・シートを使い、会議が始まった。活発な質問がどんどん出されていき、シートを埋めていった。限られた時間の中で、あっと言う間に各班の発表となった。ワークを終えて感じた事は、
- 情報の中身によって違った見立てが出てくる。(敢えて、情報に差異が加えられていて、最初に与えられた情報が違っていた。)
- 短時間の中で効率良く進めるには、パターン化された形式が有効である。
- ワーカーの経歴によって、着目する情報が違ってくる。
- エコマップを書き込んでいくだけで、全体像が捉えやすい。
- 講師のキレのあるブレない言動がカッコいい。
以上の事だった。今後に生かしていきたい。ありがとうございました。
スクールソーシャルワーカーの集い
奥村 賢一(福岡市教育委員会)
Ⅰ.はじめに
大会二日目.初日からの熱気をそのままに,今大会も正午過ぎから「スクールソーシャルワーカー(以下, SSWr と記す)の集い」が開催された.参加者は,北は北海道から南は九州・沖縄に止まらず,アメリカはニューヨーク州ブロンクスの高等学校に勤務する現役の SSWr ,中高一貫私立学校の相談員,特別支援教育の巡回指導員など,広く学校教育現場に携わる31名が集結した.
Ⅱ.「学校ソーシャルワークの定着に向けて」
限られた時間のなかで,今回も輪番で自己紹介を行った.加えて,今大会のテーマである「学校ソーシャルワークの定着に向けて」を題材に, SSWr は今何をすべきかについて,それぞれの視点や立場で考えを述べてもらった.参加者の回答では,「次年度に向けた普及・啓発活動」,「組織として雇用を継続できる努力」「( SSWr の)質の担保」などが多くを占めていた.一方で, SSWr への評価が高まることとは反比例して( SSWr の)意見が簡単に通る現場が存在することに,学校側の SSWr に対する理解を深めていくことの必要性を訴える声もあった.
Ⅲ.学会に期待すること
参加者には,別紙にて「学会に期待すること」を一筆記してもらった.回答で多かったのは,「実践の理論化」,「専門性の向上」,「 SSWr の普及・啓発」,「研究・調査活動・実践報告の活発な情報発信」,「エビデンスの積み上げ」,「 SSWr の労働・雇用条件の向上に向けたソーシャルアクション」などであった.
Ⅳ.おわりに
今大会も短い時間のなかで濃密な時間を共有することができ,実に意義深いものであったと考える.時には,自虐的で悲鳴にも似た思いが叫ばれるなか,改めて皆がこの仕事に誇りを持ち,そして何よりもこの仕事が好きだということが強く伝わってきた.参加者一人ひとりの弁には熱がこもり,まさに“集い”と呼ぶに相応しいものであった.次大会においても,一人でも多くの同士に再会できることを願って止まない.
