特集 学校・家庭・地域に根ざすSSWをめざして
SSW 事業をめぐり、その担い手であるスクールソーシャルワーカーや教委担当、地域の協働連携者の声は、いかがでしょうか。
2009年度当初の財政問題はあるとしても、自治体によってはこの1年足らずの間に、 SSW の取り組みに対し、関係者の声はおおむね評価されているのではないでしょうか。まだまだ、知名度や認知度、可視的な評価は低いかもしれません。しかし、SSWrの方とこの間、実践を共にした校長や教師、関係機関、保護者等の方から、「来年も」という期待は事実だと思います。多くの指導主事から「筋のいい事業だ」という声もあります。
数年単位で脈絡の読みにくい事業がトップダウンで教育現場に降りてくる。その都度、自治体が振り回される。こんな「困り感」が教委担当者にある中で、「 SSW の事業は納得できる。もし、モデル事業でなくなっても、市町村レベルでも維持していきたい」。こんな声がよく聞かれました。かつてSCもその認知度の広がりには3-5年かかり、15年近くを経過する今、ようやく「教育現場に馴染んできた」といわれています。
昨年の夏前後、「スクールソーシャルワーカー」や「社会福祉士」、「ケース会議」といった言葉をまったく知らなかった SSW 配置校の校長が、今年2月の運営協議会の席上、「社会福祉士の人に関わってもらいよかった。来年、継続できないとはなんたることか」という発言が飛び交う様子。また、 SSW に訳もわからず任用された人(不適切な表現ですいません)でも、半年あまりの間にケース会議やアセスメントといった言葉を自分のものにしようと努力し、自信を持って事例報告をする姿。地域の保健師や児相の職員、社会福祉士資格を持つ同僚の SSW と一緒に動く中で、実地を通じて学んできた元教師や相談員だった方の姿。あるいは、幾つかの学会主催の研修会で出会った方も、これまでの自己の活動経験(教員、相談員、カウンセラー、障害者施設の職員など)を自己修正(立ち位置や視点、技術面など)しながら、 SSW 的業務をめざし、そして自覚的なSSWrへ。中には一念発起して、社会福祉士や精神保健福祉士の取得準備を始める方などとも、大勢、出会ってきました。
自治体によっては、「もう国や県の言うことは聞かん」と、市町村独自で2008年度の委託事業分の数百万をそのまま維持し、名称は別にしても実質的に SSW の役割を継承するために財源を持ち出して事業を維持する、あるいは今年SSWrであった人材を何らかの形で教委につなぎ止めておこうとするところ。何とか2010年度につながるように2009年度を工夫しようとする自治体関係者など、必死で SSW の事業を残そうとしているのは、もはや自治体あげての取り組みになっています。地域に根ざした事業であろうとする努力がなされています。
さて、その一方で私たちの足下を見るとどうか。関係者の誰もが口にすることは、「子どもや家族とのつながり」や「地域の人材との絆・信頼関係を切りたくない」という思いではないでしょうか。これまでに関わりを持った子どもや家族、そして地域の保健師さんや家児相のケースワーカーさん、医療関係者、教師たちとの「出会い」を深めていきたいという思い。日本学校ソーシャルワーク学会が発足より提起してきた「学校ー家庭ー地域をつなぐ SSW の役割」という1つの視座への証といえます。
しかし改めて確認しておくこともあります。 SSW が地域に根ざすということは、学校外の諸専門機関との日常的な連携や関係調整という面に見られるコミュニティワークに優位性を認めるからだけではありません。校内外での子どもとのパーソナルワークや複数の子どもたちとのグループワークが、個の情緒的心理的抑圧を乗り越え、対話や共同の場である社会・地域とのつながりに向かうことを支援する。
social work in schoolという表現があります。schoolは地域を構成する1つの場であり、地域の一員だと見ると、social work for person、あるいは、social work for all になります。子どもたちは友人や家族との関係、そして、地域の他者と「共に」生きています。その中で、「人と人とのつながりの中で生きている」という実感を味わうことができる。こうした「個」と「環境」の適切なつながりを学校の中にいかに生起させていくのか。子どもにとって「環境」とは、社会や将来に拓かれた子ども社会でもある。そういった社会との接点をつなぐ SSW rの役割は、とても大切になると思います。
九州沖縄でのスクールソーシャルワーカー事業の発展と強い協力関係を築いていくことを趣旨として、2009年3月7日(土)、日本学校ソーシャルワーク学会九州沖縄大会が西南学院大学・西南コミュニティーホールにて開催された。午前中(10:30~12:00)は、学校ソーシャルワーク研修として安部計彦理事(西南学院大学)にて「児童虐待とスクールソーシャルワーカーの役割」について講話があった。安部先生は、長年、北九州市児童相談所で第一線にて児童虐待の対応業務をされてこられた。その経験より、スクールソーシャルワーカー(以下SSW)が学校での児童虐待の発見と児童相談所へのつなぎ手として重要な役割を果たすことの意義に加え、実際に児童相談所における児童虐待対応の現状と課題などについても詳しく話していただいた。私も含め、実りの多い学びであったといえる。
午後からは、13:00~14:40より「SSW実践報告」が行われた。まず、熊本県SSWの岩井佑美氏より、熊本県の平成20年度のSSW事業の取り組み状況と岩井氏が担当する鹿本教育事務所でのSSW活動状況が報告された。SSWの配置成果としては、家庭環境へのアプローチによる状況好転、ケース会議での小中学校連携の促進、地域ネットワークの拡大等があげられたが、課題としては勤務日数の制限より支援対象を増やすことの困難さ、スーパービジョン体制の未整備、介入が必要とされるケースでも家庭や学校からの支援の要請がない限り、介入が困難であることなどの指摘がなされた。
続いて、福岡県SSWの高口恵美氏より、福岡県のSSW配置状況とSSW連絡会の説明後、担当する大牟田市の中学校で取り組んだ実践事例が報告された。中学3年生の不登校生徒に対し、支援初期・支援中期・支援後期に分けてSSWがどのようにこの生徒と関わり、どのような変化が見られたのかが説明された。福岡県はモデル中学校区配置型であるが、この形態にて生徒本人への継続的介入が行えたこと、校内で動く事で適時に教員との協働体制を築くことが出来たことなどが成果として述べられた。
15:00~17:00より、シンポジウム「スクールソーシャルワーカー活用事業の現状と課題、今後」をテーマに4つの県からの報告をいただき、論議を行っていった。報告者としては、沖縄県の取り組みでは比嘉昌哉氏(沖縄国際大学)、佐賀県の取り組みでは土井幸治氏(唐津市SSW)、長崎県の取り組みでは宮崎かおり(佐世保市SSW)、鹿児島県の取り組みでは満枝政文氏(加治木町SSW)であった。それぞれのSSW配置形態等の違いが報告されたが、論点としては学校現場でのソーシャルワーク実践がなされているかという点であった。しかし、現状では、社会福祉士及び精神保健福祉士の採用は数名であり、実際にはソーシャワーカー以外の方が採用されている状況のため、ソーシャルワーク実践を展開されているとは言えない状況にあるという課題が浮き彫りとなった。さらに、今後の課題では、平成21年度の文部科学省の予算化を踏まえ、SSW事業が縮小傾向にあることが報告され、平成22年度へのSSW事業の発展に向けて、平成21年度は「アクション」を行っていく必要性が掲げられ、大会を終えた。
今回、80名の参加者であったが、島根県や和歌山県の市町村教育委員会の方々も参加され、実りの多い九州沖縄大会であったといえる。
北海道では、札幌市近郊だけではなく道内のいくつかの地域から研修会を開催してほしいという要望があがってきていましたが、大きな研修会を開くまでの準備が整わず、こじんまりとした「勉強会」を月に一回程度開くに留まっていました。私も北海道のお世話役として「年度内にはどうにか・・・」と思っていたところ、SSWとは直接には関係ないけれども、ある方を通して、北海道社会福祉士会・道央地区支部長と繋がることができました。やはりソーシャルワークでは、「繋がる」と言う事が、あらゆる場面で鍵となるようです。福祉士会の中でも「SSWの研修会を開いてほしい」という要望があり、学会と福祉士会との協同開催(北海道教育委員会と札幌市教育委員会の後援)と言う形で、年度末も近くなってきた2009年3月1日(日)に、やっと研修会をもつことができました。
研修会の目的をどのあたりに設定しようかと話し合った結果、事業は動き出したものの、その内実を知らない人が多く、やはり「SSWを知ってもらう」段階から設定しようということになり、全国あるいは既に実施されている他の地域での基礎研修会を踏襲する形のプログラムとなりました。最初に、岡本泰弘文部科学省初等中等教育局児童生徒課生徒指導第一係長による基調講演「スクールソーシャルワーカー活用事業について」と、立命館大学産業社会学部野田正人教授による基礎講座「スクールソーシャルワーカーの仕事と学校支援」によって事業の枠組みと基礎知識について学びました。岡本さんへの質疑応答では、「現代の子ども」についての本質論をたずねるような質問も飛び出し、また野田先生の講義は、いつもながらの、わかりやすい講義だったので初心者にも SSW についての基礎的理解が得られたと思います。
その後、「北海道におけるスクールソーシャルワークの現状と課題」というシンポジウムにおいて、帯広市でSSWを行っている鹿川靖子氏に実践報告をしてもらい、野田理事に加え、当日参加していただいていた大崎理事(目白大学人間学部准教授)にも助言者として急遽ご参加いただきました。鹿川さんの報告では、鹿川さんご自身の SSW 活動での戸惑いや疑問も含めて実践報告をしてくださり、その困難さを共有しながら、議論を深めることができたと思います。フロアからの質問には、 SSW が導入されたことさえ知らなかったという現場の先生や、具体的な運用についての細かい質問もありましたが、野田理事と大崎理事のお力も借りて、進めることができました。私が進行役として感じた点としては、SSWの人数や動ける時間などの物理的制約がある中で、SSWrが学校の先生と直接援助を進めつつ「ソーシャルワークの視点」を広めていくという動きと、SSWrが間接援助で効率的に動いていくという側面との、摺り合わせが必要であると思いました。
当日は、午後からの半日開催となったため、全体的に時間が短かったことが残念でした。参加者はスタッフを除いて73名でしたが、SSWや社会福祉士以外の学校関係者の参加も多く見られました。現場では、SSWが導入されても実情はわからず、その意味で関心が高かったのだと思います。今回の研修は、研修の目的を SSW の基礎理解におき、その意味では研修会の目的は達成されましたが、レベルアップという意味では、緒に就いたばかりであり、今後もこうした研修会を重ねていく必要性が確認されると同時に、広い北海道内での様々な地域での研修の持ち方の工夫も課題として残されました。
東北地区においては、SSWに関する認知度が低く啓蒙啓発を進めていく必要性を感じるとともに、初めてSSWrになった方々のスキルアップを求める声に応えていくために研修会を行ってきました。
2月14日、仙台市において研修会を開催しました。午前はNPO法人と市民団体が主催、学会共催という形で市民向け講座、午後は学会主催の専門研修を行いました。午前は、鈴木庸裕福島大学院教授(学会理事)にSSWに関する基礎的な内容を講義していただきました。その中で、「学校が家庭と地域の間に入ってつないでいく役割を担っていかなければならない。地域を支えていく子どもを育てていくという視点も大切。SSWはそのための方法でもある」という話が印象的でした。
これを受けて、SSWrの佐々木千里氏(学会会員)には、具体的な取り組みについて報告をしていただきました。SSWrは、個別的に福祉サービスを受けられるように支援するばかりではなく、困難さを抱えている子どもや保護者が置かれている環境や背景を見えるように情報を収集し整理していくことで、学校や教員の見方や対応の方法が変わっていく。それによって、そうした子どもや家族に対して地域の中でサポートネットワークが作られるような動きが起こっていったり、同じようなことで困っている子どもや家族がいないか調査して、共通のニーズがある場合には行政に公的なサービスを創り出していくようなソーシャルアクションにまでつながっていく場合もあることなど、直接支援から超間接支援まで、ミクロレベルからマクロレベルまで多岐に渡っていることを話していただきました。また、困難を抱えている子どもや保護者の問題を肩代わりしてあげるのではなく、自らサービスの利用のしかたを学習したり、手助けを求めたりしながらできる範囲を広げていけるように支援していくことが大事であるということも強調されました。参加者からは、「SSWの具体的な活動内容をイメージすることができた」「今日ほど地域という言葉が温かく聞こえたことがなかった」等といった感想が聞かれました。
午後は、グループごとに模擬事例についてアセスメントを中心とした演習を行いました。情報交換とアセスメントの違い、必要な情報を集めていく中で見立てをし、それに沿って支援プランを立てていく必要性を参加者は佐々木氏より学びました。
マスコミも取材に来てくれ、後日新聞に大きく掲載されたり、関連記事も取り上げられたので、啓蒙啓発につながったのではないかと思っています。
1ヵ月後の3月14日、山形市において研修会を行いました。参加者の多くはSSWr現任者であり、県や市の教育委員会からのバックアップもありました(交通費支給)。地域に根ざした研修、翌日からの活動にいかせる研修を目指して行いました。福祉を学んだり、福祉現場で働いたことがないSSWrが多かったので、山形県社会福祉士会事務局長であり、山形県社会福祉協議会に勤務している柴田氏に山形県内における社会資源とその活用のしかたについて講義していただきました。午後からは、事例を使って、どのような社会資源を活用できるか、それによってどのようなことが展開されていくと考えられるか、といったようなことを検討する演習を行いました。参加者の意欲と熱気が感じられる研修会でした。
今後とも、東北にSSWが定着していくとともに、SSWrの質が向上していくような研修を企画していきたいと思っています。
年度末も押し迫った3月22日、とにかく今年度東海地区での企画を実施したいとの願いから、多くの方の支えをいただいて、表記の研究会を日本福祉大学名古屋キャンパスにおいて実施しました。
東海地区がどの範囲を含むかは、いくつかの考えがあるかと思いますが、この地域での SSW の展開は、従来必ずしも活発ではなく、本研究会の企画段階では、平成21年度の SSW 事業の展開も目立った動きが聞こえてこない状況でした。そのため、従来は研修会という形で実施されてきたブロック単位の集まりですが、意図的に研修とはせず、研究会の形で開催させていただきました。当日は40名ほどの方が集ってくださいましたが、実際に SSW をされている方は数人で、教育領域にかかわる方と、関心のおありな方、特に私立学校の相談などを担当されている方や、外国人児童生徒の支援に取り組まれている相談員の方などの参加やご発言があったことが特徴でした。
内容としては、午前は『非行問題の理解と対応』というテーマで、中部地区で長く保護観察官をされると同時に、東海非行問題研究会を中心的に担ったこられた愛知教育大学教職大学院特任教授の木村隆夫先生にお話をいただきました。事例も交えつつ、非行の理解の仕方や、対応の具体例をお話いただきました。特に、学校でできることとできないことの峻別、保護者とつながることの大事さ、きちんと見立てをして対応することの大事さなど、日頃 SSW 活動で必要とされていることが、非行を中心とした別の視点から確認されたように感じました。
その後、文部科学省初等中等教育局児童生徒課で SSW を担当された岡本泰弘係長が、年度末で転勤を控えた中で、 SSW の事業に関する説明だけでなく、その熱き思いと可能性についてお話しして下さいました。氏は保護観察官という司法ソーシャルワーカーとしての経験から、 SSW の本質的な点を見事にとらえてこの間の SSW 事業をリードされてこられただけに、説得力のあるお話でした。
昼食は、遠来の方も多いので、ランチョンミーティングの形で食事をしながらの交流をはかり、活発な意見交換がなされ、司会の岩崎理事は、食事の時間がとれぬままとなりました。
午後は、野田のコーディネートで、シンポジウム『今日の学校課題と SSW 』を行い、不登校、外国籍児童、児童虐待、 SSW の動き方などの、実に多様なテーマについてシンポジストにお話いただきました。全国適応指導教室協議会会長の大島吉雅先生には、不登校の総論的課題と、自身が所長をされる名古屋市子ども適応相談センターでの活動を、わかりやすくご紹介頂きました。 SSW にとっては、重要な社会資源である教育支援センター(適応指導教室)の取組を知ると同時に、そこにどのように繋げるのかという点での SSW の役割などについて考えさせられました。
平川悦子・浜松市 SSW からは、政令指定市である浜松での活動状況と、あわせて同市における外国籍児童の課題についてご紹介いただきました。 SSW の地域特性とそこでの活動や研修支援体制の課題など、 SSW として、また学会としての課題も提示して頂いたように感じました。
佐々木千里 SSW からは、4年にわたる SSW 活動を下敷きとした、児童虐待への対応とそこでのアセスメントのあり方に関してお話をいただきました。午前の木村先生のお話と相通ずる、対応の基本を説明頂いたように思います。
後半は、会場からの質問紙に答える形での話し合いをもちましたが、私立学校での SSW の意義など、新たな課題も提示されました。
最後に、特に今回の開催にあたっては、交通至便な会場の提供とあわせて、後援いただいた日本福祉大学と、そのお世話をいただいた山本敏郎先生、また講師としてのみならず、名古屋市教育委員会の後援に関してもお骨折りいただいた大島吉雅先生に多大なお世話になりました。深く感謝いたします。