ニュースレター 第12号

目次

特集 SSWの定着化と人材育成

SSW活用事業の1年 ―青天の霹靂の第2弾への取り組み― 野田正人(立命館大学)

 昨年は、「SSW元年」というにふさわしく、一気呵成にSSWが全国に知れ渡った年になりました。少なくとも各地の教育委員会の指導主事や、社会福祉士・精神保健福祉士・臨床心理士等の中では、さまざまな思いや思惑を伴って知られるようになったと思われます。本学会も設立まもなくで、急激な状況の変化に、組織作りとSSWの現状への対応とに実にあわてた1年でもあったように思います。

 思い返せば、07年の年末に、各マスコミがSSW活用事業に予算がついたと報じたのが青天の霹靂の第1弾で、以後は相当にあわてふためいた事業の取り組みがなされました。

 文科省自体も、急遽この事業に対応するため、説明を行ったり、SSWに関する要項を作成したり、SSW活用事業の審査や推進を担当する委員会をつくるなど、様々な取り組みをされました。各自治体も同様でしたが、その対応とSSWについての取り組みには、相当な違いを感じています。

 現在、全国で約350カ所ほどの自治体が、SSW活用事業に対応していると考えられています。その中には群馬、滋賀、大阪府、香川などのように、従前からSSWを意識した活動を行っており、教育委員会の担当者の中にSSWを十分に理解された方がいたり、相談にのることのできるブレーンを抱えてきたところのように、SSWの活動イメージを持って効果的と思われる活動の枠組みを作られたところがあったようです。その一方で、多くの自治体の担当者はSSWが初耳であったり、そのイメージがつかめないままに、その他のいくつかの予算が削られたことも手伝って、なんとか絵を描いたという状況のところもあったようです。しかも、予算を伴うこと故に、その対応が間に合わず、4月から開始したところもあれば、秋以降の開始や、結局予算が間に合わずに今年度は見送ったというところも聞いています。

 このような混乱は、誰をSSWとして雇用するかという点でも見られました。社会福祉士や精神保健福祉士のように国家資格取得者を基本としたところ、臨床心理士、退職教員、従前からの相談員、退職した児童相談所職員、大学教員、民生委員などなど、とにかく教育や福祉に関わりのある方をあてたところと実に多様な状態です。働き方も年に数日から数百日、勤務時間も週4時間程度から30時間を超えるところまであり、その時間給も千円程度から5千円を上回るものまでと、多様を越えた混乱に近い状況を呈しています。

 そこに青天の霹靂第2弾として、昨年末再び関係者に激震がはしる事態となりました。

 12月24日に公表された文科省予算主要事項書によると、「社会全体の教育力の向上」という予算事項の中に、「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」なる新規の補助事業がおかれ、その予算が142億6千百万円。その中に、放課後子ども教室、学校支援地域本部、家庭教育支援基盤形成、スクールカウンセラー等活用、地域ぐるみの学校安全体制整備推進などの事業とあわせて、「スクールソーシャルワーカー活用事業」が65県市 1,040人 国の補助率3分の1としてあげられているのです(3頁の資料参照)。

 このことは、予算事項の区分が、従来の「いじめ、暴力行為、不登校、少年非行、自殺等に対する取組の推進」という枠から、先の「社会全体の教育力の向上」とりわけ「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」という、まるでSSWのキャッチコピーのような事業枠の中で、しかし、スクールカウンセラーやスクールガード・リーダーなどと予算を分け合いつつ、その役割を分担し、協働することが求められているということでもあるわけです。

 しかし、もっと現実的な課題としては、補助率3分の1ですから、必要経費の3分の2をを自治体が出さないかぎり、SSW事業は行えないということです。現状では、自治体の中には、この事業から撤退する可能性の高いところも聞いています。また従来より雇用の単価を下げざるを得ないとしているところもありますし、ある意味で昨年以上に混乱した状況が生じています。実際に活動しているSSWにはまだ次年度の方針が定まっていないこともあってか、十分な連絡が届いていないふしがありますが、今後大きな混乱が予想されるところです。

 いずれにしても、このような霹靂続きの中、SSWの本質を明らかにする研究を深め、子どもの人権と教育及び発達の保障に資することを使命とする本学会として、その本来の役割が改めて強く求められているように思います。

 【参考】  ◆学校・家庭・地域の連携協力推進事業【新規】  ( 14,261百万円)

平成21年度文部科学省 予算主要事項(概要版 pdf)の15ページ

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これからの人材育成をめぐる課題 門田光司(福岡県立大学)

 学校教育現場でソーシャルワーカーが有益なソーシャルワーク実践を展開していくためには、「人材養成」と「人材育成」の取り組みは重要課題である。

 わが国より先進国であるアメリカやカナダ等のソーシャルワーカー養成は、2年間の大学院修士課程において専門教育と現場でのインターシップを通して理論と実践の統合で養成されていく。特に、近年ではEvidence-Based Practiceを実践基盤に据えた人材養成が図られている。さらに、ソーシャルワーカーとして職務に就いた後も現任研修とスーパービジョンによる人材育成の機会が提供、または義務づけられ、日々の研鑽が求められている。このような養成と育成によって、高度な専門性を備えたソーシャルワーカーへのスキルアップが図られているのである。

 他方、わが国のソーシャルワーカー養成は社会福祉士や精神保健福祉士の養成であるが、福祉系大学・短期大学や専門学校にて規定された科目数と実習を履修し、国家試験に合格することが課せられている。しかし、わが国での養成ではアメリカやカナダ等のソーシャルワーカー養成のようにインターシップにて養成課程修了後、即実践者として活躍していくことをねらいとした養成システムではないため、現場に出てから専門性を備えた実践者育成が図られていくことになる。そして、この養成システムの違いは、「理論と実践の統合化」面で現れる。

 すなわち、わが国の養成システムでは、例えば、国家試験勉強にて「社会福祉援技術論」において実践モデル(ストレングスやケースマネジメント等)の用語や展開内容は知識としては多少知っていても、現場に出てその実践モデルを活用した専門的支援を展開できるかというと困難な状況と言わざるをえない。これは、専門性が「理論と実践の両輪」で発揮されていかないことを意味する。

 今回、文部科学省の「スクールソーシャルワーカー活用事業」を受けて、社会福祉士や精神保健福祉士の有資格者が「スクールソーシャルワーカー」として採用されることになったが、福祉現場とは異なる「学校」という他分野でソーシャルワーク実践を展開することが求められている。しかし、上記のわが国でのソーシャルワーカー養成課題に加え、養成課程で学校教育関係科目や子どもの抱える課題(不登校・非行・発達障害・その他)及びその支援のための学校ソーシャルワークに関する学びをしていない方々が学校現場に入るということになった。学校現場にソーシャルワーカーが関わる扉が開いたことは大変喜ばしいことであるが、学校ソーシャルワークという専門性の防備無しで現場に入ることは有益な実践を展開していく上では心許ない。そして、福祉現場とは異なり、学校現場では即実践者としてのソーシャルワーカーが求められているため、学校現場において時間をかけてソーシャルワーカーを人材育成していくような時間的余裕などない。

 今回の文部科学省の「スクールソーシャルワーカー活用事業」を受けて、人材養成に関し社団法人日本社会福祉士養成校協会では「スクール(学校)ソーシャルワーク教育課程認定」事業を開始する。「スクール(学校)ソーシャルワーク教育課程認定」では、定められた科目を修了し、社会福祉士及び精神保健福祉士の登録を受けた者を「社団法人日本社会福祉士養成校協会認定スクール(学校)ソーシャルワーク教育課程修了者」として修了証を交付する。ここでの定められた科目とは、「スクール(学校)ソーシャルワーク専門科目群」(「スクール(学校)ソーシャルワーク論」「スクール(学校)ソーシャルワーク演習」「「スクール(学校)ソーシャルワーク実習指導」「スクール(学校)ソーシャルワーク実習」)、「教育関連科目群」、そして追加科目(社会福祉士養成では「精神保健学」、精神保健福祉士養成では「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」)である。この「スクール(学校)ソーシャルワーク教育課程認定」では、現行の社会福祉士及び精神保健福祉士養成課程に学校ソーシャルワークや学校教育制度関連の知識を付加させることになる。

 しかし、「理論と実践の両輪」という人材養成の観点からすれば、「スクール(学校)ソーシャルワーク教育課程認定」においてもソーシャルワーカー養成の課題は未解決のままである。そのため、当面、人材育成の充実に重点をおいていくことが求められる。ここに学校ソーシャルワークという特定専門分野を中心とする学会が担う役割がある。

 今後も学会としては、人材育成に際して全国大会や地方大会、学会誌に加え、「基礎研修」や「専門研修」という専門性のスキルアップの機会を積極的に提供していく意向である。しかし、わが国における学校ソーシャルワーク実践者の人材育成の課題に向けた取り組みとしては、「理論と実践の両輪」の研鑽をつむ学校ソーシャルワーク実践者を学会として認証し、その方々が学会の「基礎研修」「専門研修」のみならず、各自治体や福祉関係団体のの研修等の講師、又はスーパーバイザーとして活躍していく体制も検討していく余地があるのではないかと考える。

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東北地区の動向と研修会について 高橋恵里香(東北地区担当理事)

 東北地区は、これまでの「子どもと親の相談事業」をSSW事業にスライドして行っているころが多いようです。また、事業開始時期も早ところで5月、6月から始まっていたり、10月、1月になってやっと始まったところありと様々す。9月頃から、各県でSSW事業の運営協議や連絡会が開催され、そこで、はじめてSSWはどういうものなのか、ということを知った、いう方が多かったです。「なるほど、スクールーシャルワークってそういうものなのか」「わったけど、今すぐにはそこまではやれないな」「んな仕事するんだったら、今の勤務時間では無だ」などの声が聞かれました。また、スクールウンセラーだけではなく、小中学校には、退職長を中心とした「教育相談員」が、児童生徒や護者の悩み相談に応じたり、地域と学校の連携援や他機関との連携支援に取り組んでいたり、「応支援相談員」が、別室登校の児童生徒への対だけでなく、不登校児童生徒の家庭を訪問したり学校と家庭の連携支援をしていたりしているで、そういった方々との違いやすみ分け等に関ても混乱しています。こうした課題はありながも、東北地区ではSSWについての認知度を上げていくことが必要ではないかと思われたため、研修会を開催しています。

 まず、8月23日に福島市で基礎研修会を行いました。(詳しくは会報第11号をご覧下さい)その後、12月6日に盛岡市で基礎研修会を行いました。師走の忙しい時期にもかかわらず、岩手県内を中心に東北各地から70人程の参加者がありました。参加者のうち、10人ちょっとがSWrで、20人程が学校関係(教育委員会含む)、20人程が社会福祉士や精神保健福祉士の資格有して、医療・福祉領域で仕事をしている人、他は、主任児童委員、学生、臨床心理士、保護観官などでした。

 研修内容は、午前に基礎講座(鈴木理事)を行い、午後は、基調講演(文部科学省の岡本氏)と鼎談(教員、SC、SSWr、教育行政の各立場から)という構成でした。参加者からのアンケートでは、次のような感想や要望が聞かれました。

 こうした声を受けて、2009年2月14日には大阪府のSSWrに協力してもらっい、専門研修を仙台市で行います。3時間の演習形式です。また、3月14日には山形市で、基礎研修と専門研修の中間当たるような研修を企画しています。

 参加者の立場や問題意識によって研修会に期待することが異なっているので、その辺のことを極めながら今後の研修のあり方を検討したいと思います。

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関東甲信越地区SSW研修会の実施報告 大崎広行(関東甲信越地区担当理事)

 今回の研修会(11月16日)は、当初は群馬県の西毛地域を中心とした教育関係者に向けた、SSW活用事業の周知と今後の発展につなげるための企画として計画されましたが、企画の過程で、学会事務局からの勧めもあり、関東甲信越地区の研修会として実施することとなりました。したがって、本研修会の案内は、群馬県内だけでなく、関東甲信越地区の県教委にも送付され、各県教委を通してSSW活用事業実施市町村への周知を図りました。今回の研修会への参加地域と参加者の所属は、下記の通りです。

参加者
75名(内、関係者:15名)
 
参加者地域
県内(安中市・前橋市・藤岡市・高崎市・館林市・桐生市)、県外(埼玉県熊谷市、茨城県結城市・大洗町、長野県)
 
参加者の所属
SSW事業関係者(SSW、事業担当職員)、教員、学校管理職(教頭・校長)、教育委員会、市議会議員、県議会議員、社会福祉士(県士会会長、会員)、臨床心理士(SC)、精神保健福祉士、一般。
 

研修会では、文科省岡本係長の基調講演のあと、群馬県教育委員会角田指導主事(SSW活用事業担当)からの事業報告が行われました。基調講演では、SSW活用事業の概要と現在の実施状況についての説明があり、事業報告では、現在県が実施しているSSW活用事業の概要について、昨年からの本事業の流れを含めた説明がなされました。

 シンポジウムでは、富士見村SSW(SCとの連携、町単独事業)、前橋市SSW(非行ケースでの活用、市単独事業)、高崎市指導主事(担当指導主事の立場からの発題、県SSW活用事業)、安中市SSW(校内適応指導教室を拠点とした活動、県SSW活用事業)の4氏のそれぞれ特徴のある発題のあと、県教委の担当指導主事を交えて、フロアーとの質疑応答が行われました。

 今回の研修は、県内外のSSWに向けての研修という目的以外に、SSW活用事業を県内市町村にいかに定着させるかを意図して、幅広い方々への参加を呼びかける形で、広報活動を行いました。中でも教育委員会への働きかけと併せて、事業実施自治体を中心に市会議員・県会議員にも直接案内を送付し、安中市議および群馬県議の参加を得たことは、今後の本事業の自治体での事業展開に大きな期待の持てる成果であったといえます。

 しかし、残念だったことは、地元市教委だけでなく県内SSW活用事業実施自治体の教育委員会はじめ関係者(SSW、教員)の十分な参加が得られなかったことです。広報の時期や仕方など、関係者への周知の問題もあると思いますが、教育委員会の指導主事をはじめ関係者の本事業への意識や関心のあり方に課題の残る結果となりました。

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九州沖縄地区専門研修会に参加して 岩永 靖(熊本県宇城教育事務所SSWr・九州ルーテル学院大学講師)

 2008年11月30日、九州・沖縄地区のスクールソーシャルワーカー現任者を対象とした「専門研修」が福岡市の西南学院大学で開かれました。九州・沖縄各地から53名の参加があり半日の研修でしたが、中身の濃い実践的な研修会でした。

 前半は、「校内支援ケース会議の進め方」として大阪府スクールソーシャルワーカーの佐々木千里先生の講義ならびロールプレイ、後半は「シートを活用したアセスメントと教育支援計画の立て方」として福岡市スクールソーシャルワーカーの奥村賢一先生のグループワークでした。奇しくも12月2日の文科省主催の全国研修の講師陣ということで、非常にレベルの高い内容でした。

 私自身、昨年度からスクールソーシャルワーカーとして勤務し、教育と福祉の協働が謳われる中、特に学校現場の中にソーシャルワークの視点をどのように持ち込むか、そしてその視点を関係者との協働の中でどう位置づけ、子どもたちの最善の利益を目指していくことができるか、常に悩みながらの日々でした。

 そのような中、今回の研修で取り上げられたテーマも私自身にとってタイムリーなテーマでした。佐々木先生の「学校現場の先生方にわかりやすい言葉でカンファレンスシートを作成する。」「ケース会議とはソーシャルワークの視点を具体化する機会である。」「アセスメントを大切にする。」そして「学校の役割と、その境界の明確化」大きくうなずきながら学せて頂きました。明日から活かせていけるヒントがたくさん盛り込まれていました。

 また、奥村先生のグループワークは前半の佐々木先生の話を深める形でアセスメントシートの活用でした。「アセスメントシートは道具、使いこなすこと、手入れが大事」とのこと。なるほどです。日々の業務に追われアセスメントが不十分であったり、またアセスメントを関係機関とうまく共有できていなかったりしたことを改めて感じさせられました。また、サザエさんを使ったジェノグラム、ドラえもんを使ったエコマップどちらも楽しく取り組むことができました。

 研修会終了後はもちろん懇親です。博多の美味しい料理と酒と共に各県の取り組み状況などの情報交換、そして九州沖縄ブロックのネットワークに支えられ多くのエネルギーを受けることができました。全国でも初めての専門研修ということでこのネットワークとエネルギーを今後も広げ、当時者である子どもを主体としたソーシャルワークの視点と、専門性の向上を目指していければと思います。最後に門田先生をはじめ、研修会開催に尽力いただいた先生方、また講師の佐々木先生、奥村先生ありがとうございました。

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日本学校ソーシャルワーク学会 第4回研究大会の概要

こちらをご参照ください

名簿作成に関するお願い

 来る4月には理事選挙がおこなわれます。その選挙用名簿の作成に関わり、住所、所属等に変更のある方は、学会事務局まで、ご連絡ください。

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